スキップしてメイン コンテンツに移動

Project Euler - Problem 15

問題

  • 原文

    How many routes are there through a 20・20 grid?

  • 日本語訳

    20 ・ 20 のマス目ではいくつのルートがあるか。

解答

グリッド上の座標を(x, y)で表すこととし、左上の始点を(0, 0)、右下の終点を(20, 20)と定めます。 座標(x, y)から(20, 20)へのルート数をroutesFrom(x, y)と書くことにすると、この問題はroutesFrom(0, 0)を求める問題に相当します。 routesFrom(x, y)は次のようにして求められます:

  1. routesFrom(x, y) = 1 (x = 20, y = 20)
  2. routesFrom(x, y) = 0 (x > 20 or y > 20)
  3. routesFrom(x, y) = routesFrom(x + 1, y) + routesFrom(x, y + 1) (otherwise)

routesFrom(0, 0)の計算量はグリッドの大きさnの増加に対応して急激に大きくなります(多分計算量の上限はO(2^n)くらい)。 routesFrom(0, 0) = routesFrom(1, 0) + routesFrom(0, 1) = routesFrom(2, 0) + routesFrom(1, 1) + routesFrom(1, 1) + routesFrom(0, 2) = ...といったように、基底ケース(上の1.と2.)に行き当たるまで倍々に項が増えていきます。今回はn=20なので、このままでは現実的な時間内に終わりません。

別々のルートが同じ座標を通ることはよくあります。先ほどの展開でroutesFrom(1, 1)という項が2回出てきているのは、(0, 0)から(1, 1)に至るルートが2つ存在するからです。 その座標に至るまでのルートに関わらずそれ以降に取り得るルートの数は同じなので、routesFrom(x, y)の値をメモ化することで膨大な計算を省くことができます。

(use srfi-1)
(define (count-routes num-cells)
  (define lookup-table (make-vector (+ num-cells 1)))
  (define (routes-from x y) (ref (ref lookup-table y) x))
  (define (count-routes-1 x y)
    (cond
     ((or (> x num-cells) (> y num-cells)) 0)
     ((and (= x num-cells) (= y num-cells)) 1)
     ((not (zero? (routes-from x y))) (routes-from x y))
     (else
      (let ((num-routes (+ (count-routes-1 (+ x 1) y)
                           (count-routes-1 x (+ y 1)))))
        (set! (routes-from x y) num-routes)
        num-routes))))
  (set! (setter routes-from)
        (lambda (x y num-routes) (set! (ref (ref lookup-table y) x) num-routes)))
  (for-each (lambda (i)
              (set! (ref lookup-table i) (make-vector (+ num-cells 1) 0)))
            (iota (+ num-cells 1)))
  (count-routes-1 0 0))
(define (solve) (count-routes 20))
(define (main argv)
  (display (solve))
  (newline))

コメント

  1. 40C20 = 137846528820
    組合せの問題として考えるといいですよ。

    返信削除
  2. あぁそうか!参考になります。
    組み合わせや順列は一等苦手なんですが、こういう問題にはそのまま使えるんですね。復習しなければ。

    返信削除

コメントを投稿

このブログの人気の投稿

Perl 5.42 が出たので perldelta を読んだ

去る2025年7月2日に Perl 5.42 がリリースされた。ので例によって perldelta を一通り眺めた。 このバージョンは実験的機能である組込みのクラス構文の実装が進展した。 他にもパフォーマンスの改良、組み込み関数・演算子・C レベル API の追加、多数のバグ修正があるが劇的な変化ではなく、発見・修正された脆弱性もかなり限定的な問題なので刺さる機能がなければ急いで移行する必要はあまりないように思われる。 以下主だった新機能の抜粋。 source::encoding プラグマ ソースコードが特定の文字エンコーディングで記述されていることを宣言するプラグマ。サポートされているエンコーディングは ASCII と UTF-8 のみである。 use source::encoding 'ascii' が宣言された字句的スコープにおいて非 ASCII 文字を記述するとコンパイル時エラーが発生するようになる。 use source::encoding 'utf8' は単に use utf8 のシノニムである。 Perl 5 は 2000 年にリリースされたバージョン 5.6 から UTF-8 によるソースコード記述をサポートしているが、後方互換性のため既定では ASCII を前提としており、 utf8 プラグマを使わない限り文字列リテラルや RegExp リテラルはバイト列として解釈されるし、識別子にも英数字および '_' しか使うことができない。 識別子はともかく「リテラルは既定でバイト列である」という意味論は極めて誤用しやすい。Unicode 文字列のつもりで渡した値が意図せずバイト列であったために実行時警告・エラーを得た経験は非英語圏のプログラマなら一度ならずあるだろう。 このプラグマはそのような初歩的なバグをコンパイル時に検出することで、Perl プログラムの最も頻出するエラーの一つを実質的に解消しようとしている。 ちなみに use v5.42 すると自動で use source::encoding 'ascii' も有効になるので、今まさに警告を吐いているようなアプリケーションをアップグレードする際は注意が必要である。 any / all 演算子 実験的...

Perl の新 class 構文を使ってみる

Perl 5 のオブジェクト指向機能は基本的には Python の影響を受けたものだが、データを名前空間 (package) に bless する機構だけで Perl 4 以来の名前空間とサブルーチンをそのままクラスとメソッドに転換し第一級のオブジェクト指向システムとした言語設計は驚嘆に価する。 実際この言語のオブジェクトシステムは動的型付言語のオブジェクト指向プログラミングに要求されるおよそあらゆる機能を暗にサポートしており、CPAN には Moose を筆頭とした屋下屋オブジェクトシステムが複数存在しているがその多くは Pure Perl ライブラリである。つまり「やろうと思えば全部手書きで実現できる」わけである。 そういうわけで Perl のオブジェクト指向プログラミングサポートは機能面では (静的型検査の不在という現代的には極めて重大な欠如を除けば) 申し分ないのだが、しかし Moose その他の存在が示しているように一つ明らかな欠点がある。記述の冗長さだ。 コンストラクタを含むあらゆるメソッドは第一引数としてレシーバを受ける単なるサブルーチンとして明示的に書く必要があるし、オブジェクトのインスタンス変数 (a.k.a. プロパティ / データメンバ) は bless されたデータに直接的ないし間接的に プログラマ定義の方法 で格納されるためアクセス手段は実装依存である。これはカプセル化の観点からは望ましい性質だが、他者の書いたクラスを継承するときに問題となる。ある日データ表現を変更した親クラスがリリースされると突然自分の書いた子クラスが実行時エラーを起こすようになるわけだ。 そうならないためにはインスタンス変数へのアクセスに (protected な) アクセサを使う必要があるのだが、そのためには親クラスが明示的にそれらを提供している必要があるし、そもそも Perl にはメソッドのアクセス修飾子というものがないので完全な制御を与えるならばオブジェクトの内部状態がすべて public になってしまう。 そのような事情もあり、特にパフォーマンスが問題にならないようなアプリケーションコードでは Moose のようなリッチな語彙を提供するオブジェクトシステムを使うことが 公式のチュートリアルでも推奨 されてきた。Perl コアのオブジェクトシステムの改良は...

Perl 5 to 6 - 列挙型

これはMoritz Lenz氏のWebサイト Perlgeek.de で公開されているブログ記事 "Perl 5 to 6" Lesson 16 - Enums の日本語訳です。 原文は Creative Commons Attribution 3.0 Germany に基づいて公開されています。 本エントリには Creative Commons Attribution 3.0 Unported を適用します。 Original text: Copyright© 2008-2010 Moritz Lenz Japanese translation: Copyright© 2011 SATOH Koichi NAME "Perl 5 to 6" Lesson 16 - 列挙型 SYNOPSIS enum bit Bool <False True>; my $value = $arbitrary_value but True; if $value { say "Yes, it's true"; # 表示される } enum Day ('Mon', 'Tue', 'Wed', 'Thu', 'Fri', 'Sat', 'Sun'); if custom_get_date().Day == Day::Sat | Day::Sun { say "Weekend"; } DESCRIPTION 列挙型は用途の広い獣です。定数の列挙からなる低レベルのクラスであり、定数は典型的には整数や文字列です(が任意のものが使えます)。 これらの定数は派生型やメソッド、あるいは通常の値のようにふるまいます。 but 演算子でオブジェクトに結びつけることができ、これによって列挙型を値に「ミックスイン」できます: my $x = $today but Day::Tue; 列挙型の型名を関数のように使うこともでき、引数として値を指定できます: $x = $today but Day($weekday); ...

OCaml で Web フロントエンドを書く

要旨 フロントエンド開発に Elm は堅くて速くてとても良いと思う。昨今の Flux 系アーキテクチャは代数的データ型と相性が良い。ところで工数を減らすためにはバックエンドも同じ言語で書いてあわよくば isomorphic にしてしまいたいところだが、Elm はバックエンドを書くには現状適していない。 OCaml なら js_of_ocaml でエコシステムを丸ごとブラウザに持って来れるのでフロントエンドもバックエンドも無理なく書けるはずである。まず The Elm Architecture を OCaml で実践できるようにするため Caelm というライブラリを書いている。俺の野望はまだまだこれからだ (未完) Elm と TEA について Elm というプログラミング言語がある。いわゆる AltJS の一つである。 ミニマリスティクな ML 系の関数言語で、型推論を持ち、型クラスを持たず、例外機構を持たず、変数の再代入を許さず、正格評価され、代数的データ型を持つ。 言語も小綺麗で良いのだが、何より付属のコアライブラリが体現する The Elm Architecture (TEA) が重要である。 TEA は端的に言えば Flux フロントエンド・アーキテクチャの変種である。同じく Flux の派生である Redux の README に TEA の影響を受けたと書いてあるので知っている人もいるだろう。 ビューなどから非同期に送信される Message (Redux だと Action) を受けて状態 (Model; Redux だと State) を更新すると、それに対応して Virtual DOM が再構築されビューがよしなに再描画され人生を書き換える者もいた——という一方向の流れはいずれにせよ同じである。 差異はオブジェクトではなく関数で構成されていることと、アプリケーション外部との入出力は非同期メッセージである Cmd / Sub を返す規約になっていることくらいだろうか。 後者は面白い特徴で、副作用のある処理はアプリケーションの外で起きて結果だけが Message として非同期に飛んでくるので、内部は純粋に保たれる。つまり Elm アプリケーションが相手にしないといけない入力は今現在のアプリケーションの完全な状態である Model と、時系列イベ...

Perl 5 to 6 - サブルーチンとシグネチャ

これはMoritz Lenz氏のWebサイト Perlgeek.de で公開されているブログ記事 "Perl 5 to 6" Lesson 04 - Subroutines and Signatures の日本語訳です。 原文は Creative Commons Attribution 3.0 Germany に基づいて公開されています。 本エントリには Creative Commons Attribution 3.0 Unported を適用します。 Original text: Copyright© 2008-2010 Moritz Lenz Japanese translation: Copyright© 2011 SATOH Koichi NAME "Perl 5 to 6" Lesson 04 - サブルーチンとシグネチャ SYNOPSIS # シグネチャなしのサブルーチン——Perl5風 sub print_arguments { say "Arguments:"; for @_ { say "\t$_"; } } # 固定引数の型指定付きシグネチャ sub distance(Int $x1, Int $y1, Int $x2, Int $y2) { return sqrt ($x2-$x1)**2 + ($y2-$y1)**2; } say distance(3, 5, 0, 1); # デフォルト引数 sub logarithm($num, $base = 2.7183) { return log($num) / log($base) } say logarithm(4); # 第2引数はデフォルトを利用 say logarithm(4, 2); # 明示的な第2引数 # 名前付き引数 sub doit(:$when, :$what) { say "doing $what at $when"; } doit(what => 'stuff', when => 'once'); # ...