スキップしてメイン コンテンツに移動

Project Euler - Problem 14

問題

ある関数を繰り返し適用して得られる数列が最も長くなる初期値n(1,000,000未満)を求める問題です。

解答

nから始まる数列の長さをlen(n)で表すと、次のように定義できます:

  1. len(n) = 1 (n = 1)
  2. len(n) = len(3n + 1) + 1 (nは奇数)
  3. len(n) = len(n / 2) + 1 (nは偶数)

つまり、len(n)の計算は1.の場合を基底ケースとする再帰アルゴリズムとして実装できます。

これをそのまま実装しても答えが得られますが、非常に遅いです。高速化の為に少し検討を加えましょう。

まず56から始まる数列を考えます。56は偶数なので3.の場合に該当し、len(56) = len(56 / 2) + 1 = len(28) + 1です。また、9から始まる数列の場合は2.に該当し、len(9) = len(3 * 9 + 1) + 1 = len(28) + 1となります。 つまりlen(56) = len(9) = len(28) + 1というわけで、len(56)とlen(9)の値は実は同じです。2.と3.の再帰式を見て予想できるように、このような重複は度々起こるので、それぞれの計算でlen(28)の計算をやり直すようなことをしていると大きな無駄となります。

これを解決するには過去に計算したlen(n)の値を覚えておき、次に同じnが与えられた時には覚えていた値を返すようにします。そうすることで2度目以降の関数呼び出しでは計算を省くことができ、時間の節約になります。これは同じ引数に対して常に同じ値を返す(つまり参照透過性がある)関数一般に使えるテクニックで、これをメモ化と呼びます。

そう言うわけで長々と説明しましたが、要はProblem 10で使ったルックアップ・テーブルと同じものです。今回はクロージャ生成時に確保されたベクタの長さより大きいnが与えられる場合(十分大きい奇数が与えられた時)が有り得るので、上限(upper-limit)より大きいnに対してはその都度計算し直しています。

(use srfi-1)
(define (get-sequence-length next-value upper-limit)
  (define lookup-table (make-vector (+ upper-limit 1) 0))
  (define (sequence-length n)
    (let ((len (if (> n upper-limit) 0 (ref lookup-table n))))
      (if (not (zero? len)) len
          (let ((len
                 (+ 1 (sequence-length (next-value n)))))
            (unless (> n upper-limit) (set! (sequence-length n) len))
            len))))
  (set! (setter sequence-length)
        (lambda (n len) (set! (ref lookup-table n) len)))
  (set! (sequence-length 1) 1)
  sequence-length)
(define (solve)
  (define sequence-length
    (get-sequence-length (lambda (n) (if (even? n) (/ n 2) (+ (* 3 n) 1)))
                         999999))
  (car (fold (lambda (a b) (if (> (cdr a) (cdr b)) a b))
             '(0 . 0)
             (map (lambda (n) (cons n (sequence-length n))) (iota 999999 1)))))
(define (main argv)
  (display (solve))
  (newline))

コメント

このブログの人気の投稿

Perl 7 より先に Perl 5.34 が出るぞという話

Perl 5 の次期バージョンとして一部後方互換でない変更 (主に間接オブジェクト記法の削除とベストプラクティスのデフォルトでの有効化) を含んだメジャーバージョンアップである Perl 7 がアナウンスされたのは昨年の 6 月 のことだったが、その前に Perl 5 の次期周期リリースである Perl 5.34 が 5 月にリリース予定 である。 現在開発版は Perl 5.33.8 がリリースされておりユーザから見える変更は凍結、4 月下旬の 5.33.9 で全コードが凍結され 5 月下旬に 5.34.0 としてリリース予定とのこと。 そういうわけで事前に新機能の予習をしておく。 8進数数値リテラルの新構文 見た瞬間「マジかよ」と口に出た。これまで Perl はプレフィクス 0 がついた数値リテラルを8進数と見做してきたが、プレフィクスに 0o (zero, small o) も使えるようになる。 もちろんこれは2進数リテラルの 0b や 16進数リテラルの 0x との一貫性のためである。リテラルと同じ解釈で文字列を数値に変換する組み込み関数 oct も` 新構文を解するようになる。 昨今無数の言語に取り入れられているリテラル記法ではあるが、この記法の問題は o (small o) と 0 (zero) の区別が難しいことで、より悪いことに大文字も合法である: 0O755 Try / Catch 構文 Perl 5 のリリース以来 30 年ほど待たれた実験的「新機能」である。 Perl 5 における例外処理が特別な構文でなかったのは予約語を増やさない配慮だったはずだが、TryCatch とか Try::Tiny のようなモジュールが氾濫して当初の意図が無意味になったというのもあるかも知れない。 use feature qw/ try / ; no warnings qw/ experimental::try / ; try { failable_operation(); } catch ( $e ) { recover_from_error( $e ); } Raku (former Perl 6) だと CATCH (大文字なことに注意) ブロックが自分の宣言されたスコープ内で投げられた例外を捕らえる...

(multi-)term-mode に dirtrack させる zsh の設定

TL;DR .zshrc に以下を書けば良い: # Enable dirtrack on (multi-)term-mode. if [[ " $TERM " = eterm * ]]; then chpwd() { printf '\032/%s\n' " $PWD " } fi 追記 (May 14, 2025): oh-my-zsh を使っていれば emacs プラグインが勝手にやってくれる: plugins = ( emacs ) 仔細 term-mode は Emacs 本体に付属する端末エミュレータである。基本的には Emacs 内でシェルを起動するために使うもので、古い shell-mode よりも端末に近い動きをするので便利なのだが、一つ問題がある。シェル内でディレクトリを移動しても Emacs バッファの PWD がそのままでは追従しない点だ。 こういう追従を Emacs では Directory Tracking (dirtrack) と呼んだりするが、 shell-mode や eshell ではデフォルトで提供しているのに term-mode だけそうではない。 要するにシェル内で cd してもバッファの PWD は開いた時点のもの (基本的には直前にアクティヴだったバッファの PWD を継承する) のままなので、移動したつもりで C-x C-f などをするとパスが違ってアレっとなることになる。 実は term-mode にも dirtrack 機能自体は存在しているのだが、これは シェルがディレクトリ移動を伴うコマンドを実行したときに特定のエスケープシーケンスを含んだ行を印字することで Emacs 側に通知するという仕組み になっている。 Emacs と同じく GNU プロジェクトの成果物である bash は Emacs 内での動作を検出すると自動的にこのような挙動を取るが、zsh は Emacs の事情なんか知ったことではないので手動で設定する必要がある。 まずもって「ディレクトリ移動のコマンドをフックする」必要がある訳だが、zsh の場合これは簡単で cd / pushd / popd のようなディレクトリ...

macOS で GUI 版 Emacs を使う設定

macOS であっても端末エミュレータ上で CLI 版 Emacs を使っているプログラマは多いと思うが、端末側に修飾キーを取られたり東アジア文字の文字幅判定が狂ってウィンドウ描画が崩れたりなどしてあまり良いことがない。 それなら GUI 版の Emacs.app を使った方がマウスも使える上に treemacs などはアイコンも表示されてリッチな UI になる。 しかし何事も完璧とはいかないもので、CLI だと問題なかったものが GUI だと面倒になることがある。その最大の原因はシェルの子プロセスではないという点である。つまり macOS の GUI アプリケーションは launchd が起動しその環境変数やワーキングディレクトリを引き継ぐので、ファイルを開こうとしたらホームディレクトリ ( ~/ ) でなくルートディレクトリ ( / ) を見に行くし、ホームディレクトリなり /opt/local なりに好き勝手にインストールしたツールを run-* 関数やら shell やら flycheck やらで実行しようとしてもパスが通っていない。 ワーキングディレクトリに関しては簡単な解決策があり、 default-directory という変数をホームディレクトリに設定すれば良い。ただし起動時にスプラッシュスクリーンを表示する設定の場合、このバッファのワーキングディレクトリは command-line-default-directory で設定されており、デフォルト値が解決される前に適用されてしまうので併せて明示的に初期化する必要がある: (setq default-directory "~/") (setq command-line-default-directory "~/") 次にパスの問題だが、まさにこの問題を解決するために exec-path-from-shell というパッケージがある。これを使うとユーザのシェル設定を推定し、ログインシェルとして起動した場合の環境変数 PATH と MANPATH を取得して Emacs 上で同じ値を setenv する、という処理をやってくれる。MELPA にあるので package-install するだけで使えるようになる。 このパッケージは GUI ...

開発環境の構築に asdf が便利なので anyenv から移行した

プロジェクト毎に異なるバージョンの言語処理系やツールを管理するために、pyenv や nodenv など *env の利用はほとんど必須となっている。 これらはほとんど一貫したコマンド体系を提供しており、同じ要領で様々な環境構築ができる非常に便利なソフトウェアだが、それを使うことで別の問題が出てくる: *env 自身の管理である。 無数の *env をインストールし、シェルを設定し、場合によりプラグインを導入し、アップデートに追従するのは非常に面倒な作業だ。 幸いなことにこれをワンストップで解決してくれるソリューションとして anyenv がある。これは各種 *env のパッケージマネージャというべきもので、一度 anyenv をインストールすれば複数の *env を簡単にインストールして利用できる。さらに anyenv-update プラグインを導入すればアップデートまでコマンド一発で完了する。素晴らしい。 そういうわけでもう長いこと anyenv を使ってきた。それで十分だった。 ——のだが、 ここにもう一つ、対抗馬となるツールがある。 asdf である。anyenv に対する asdf の優位性は大きく2つある: 一貫性と多様性だ。 一貫性 “Manage multiple runtime versions with a single CLI tool” という触れ込み通り、asdf は様々な言語やツールの管理について一貫したインタフェースを提供している。対して anyenv は *env をインストールするのみで、各 *env はそれぞれ個別のインタフェースを持っている。 基本的なコマンド体系は元祖である rbenv から大きく外れないにしても、例えば jenv のように単体で処理系を導入する機能を持たないものもある。それらの差異はユーザが把握し対応する必要がある。 多様性 asdf はプラグインシステムを持っている。というより asdf 本体はインタフェースを規定するだけで、環境構築の実務はすべてプラグイン任せである。 そのプラグインの数は本稿を書いている時点でおよそ 300 を数える。これは言語処理系ばかりでなく jq などのユーティリティや MySQL のようなミドルウェアも含むが、いずれにしても膨大なツールが asdf を使えば...

Perl のサブルーチンシグネチャ早見表

Perl のサブルーチン引数といえば実引数への参照を保持する特殊配列 @_ を手続き的に分解するのが長らくの伝統だった。これはシェルの特殊変数 $@ に由来する意味論で、おそらく JavaScript の arguments 変数にも影響を与えている。 すべての Perl サブルーチンはプロトタイプ宣言がない限りリスト演算子なので、この流儀は一種合理的でもあるのだが、実用的にそれで良いかというとまったくそうではないという問題があった; 結局大多数のサブルーチンは定数個の引数を取るので、それを参照する形式的パラメータが宣言できる方が都合が良いのである。 そういうわけで実験的に導入されたサブルーチンシグネチャ機能により形式的パラメータが宣言できるようになったのは Perl 5.20 からである。その後 Perl 5.28 において出現位置がサブルーチン属性の後に移動したことを除けば Perl 5.34 リリース前夜の今まで基本的に変わっておらず、未だに実験的機能のままである。 おまじない シグネチャは前方互換性を持たない (構文的にプロトタイプと衝突している) 実験的機能なのでデフォルトでは無効になっている。 そのため明示的にプラグマで利用を宣言しなければならない: use feature qw/signatures/; no warnings qw/experimental::signatures/; どの途みんな say 関数のために使うので feature プラグマは問題ないだろう。実験的機能を断りなしに使うと怒られるので、 no warnings で確信犯であることをアピールする必要がある。 これでプラグマのスコープにおいてサブルーチンシグネチャ (と :prototype 属性; 後述) が利用可能になり、 従来のプロトタイプ構文が無効になる。 使い方 対訳を載せておく。シグネチャの方は実行時に引数チェックを行うので厳密には等価でないことに注意: # Old School use feature qw/signatures/ 1 sub f { my ($x) = @_; ... } sub f($x) { ... } 2 sub f { my ($x, undef, $y) = @_...