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多分週刊チラシの裏 (Sep 21-27, 2020)

Killed by Mozilla

Mozilla がディスコンにした製品およびサービスのリスト。

COVID-19 パンデミックで収入が激減し全社の四分の一にあたる従業員の解雇と収益を得られる製品への集中に踏み切った Mozilla Corp. の最初の犠牲はノートアプリ Firefox Notes とファイル送信サービス Firefox Send となった。過去には第三のモバイル OS を目指した Firefox OS とか Mac ネイティブな Gecko ベースブラウザ Camino など懐かしい名前も見られる。

ちなみに元ネタは Google が終了したサービスをリストしている Killed by Google で、こちらは 2020 年 9 月 26 日現在 205 個の製品とサービスが挙がっている。

Firefox 81.0 リリースノート

Mozilla Firefox 81.0 が Release チャンネルに公開された。最大の新機能はメディア再生のキーボードないしヘッドセットからの制御である。要はバックグランドで再生している YouTube タブを AirPods から一時停止できるようになった。

Developer Tools における色覚異常シミュレーションの改善やブラウザ標準 audio/video 要素のアクセシビリティ改善なども含まれている。

Facebook が自社プラットフォーム上での複数国による組織的政治工作を認識しながら放置していた

Facebook が大量の偽アカウントを動員した政治工作を認識していながら、特に小国のそれに対して対策を放棄していたという内部告発。

元 Facebook のデータ科学者である Sophie Zhang 氏の告発によれば、ホンジュラスで大統領派の工作が行われていることを氏が報告してから実際に対策が為されるまでに 9 ヶ月、アゼルバイジャンでの与党の工作を同様に報告してから組織的な調査が始まるまでに実に 1 年を要したという。

本来この手の濫用に対応するはずの専任チームは濫用の圧倒的な割合を占めるスパム対応にかかりきりで、政治工作については対象が合衆国か西欧である場合を除いて積極的に行動せず、小国の民主主義は Zhang 氏の空き時間を利用した片手間の対応にかかっていたとのこと。

Rust じゃダメな理由

近年人気が出ているシステムプログラミング言語 Rust についての批評。

Rust が目標にしているシステムプログラミング領域において C / C++ などと比較した場合の安全性は評価しつつも、特に今日の C++ から見れば決定的な優位ではないこと、LLVM 依存による GCC 比での対応アーキテクチャの少なさ、ツール類の貧しさ、明文化されたメモリモデルがないことによる Unsafe ブロックの互換性への懸念、言語の複雑さや唯一の完全な処理系である rustc のコンパイル速度などが問題点に挙げられている。

何より、第一に挙げられているのは「すべてのプログラミングがシステムプログラミングではない」である。アプリケーションプログラミングで、性能要件に足るなら Go や Kotlin で良いのだ。

libc は UNIX API の一部なのか

アプリケーションと OS とのインタフェースは本来システムコールだが、実際のところ UNIX においてはそうではなく一段と高水準な C ランタイムとライブラリに拠っているため C 以外の言語が割を喰っているという指摘。

明示的にそう表明しているのは Solaris / Illumos など一部の UNIX のみだが、他の UNIX も同様とのこと。libc の一部のみを初期化して使用する文書化された方法は存在せず、結局 OS とのインタフェースとしてあらゆる言語が libc に依存している。

例外的に Go が libc に依存せず自前の標準ライブラリでシステムコールを発行しているのは割と有名だが、そのおかげで時々問題も発生している。Go の設計者 3 名の内 2 人 (Ken Thompson と Rob Pike) は C の設計者でもあることを考えるとこの実装判断は興味深い。

次世代 Xbox Series X と間違えて現行 Xbox One X を買っちゃった人が結構いる模様

Xbox Series X/S の予約が始まったのと同時に現行機種である Xbox One X の売上が急上昇し、Amazon.com では実に 747% の伸びを示したとのこと。

焦った消費者が名前の紛らわしさから誤って注文したものか、あるいはニュースに反応した (出来の悪い) ボットによる自動注文と推測されている。ちなみに名前に関しては Microsoft 自身も混乱している模様。

Windows XP / Windows Server 2003 のソースコードが流出

2001 年に発売されたコンシューマ向け OS の Windows XP とそのサーバ版である Windows Server 2003 のソースコードが公に流出した。

Microsoft のプロプライエタリなコードの流出はこれが初めてではないが、XP / Server 2003 に関してはこれが最初とのこと。

Windows XP 開発中に Aqua 風の UI テーマがあった模様

Windows XP の流出したソースコードからかつて Mac OS X (現在の macOS) に搭載されていた初期の Aqua 風テーマが発見されたという話。

Candy という名称が与えられたそのテーマは不完全だが、ボタンなどいくつかの UI 部品が丸みを帯びたポリカーボネートかガラスのような質感になっており、当時 (一応) リリースされていた Mac OS X の Aqua に類似した特徴を持っている。Windows XP の UI テーマエンジンを開発中にプレースホルダとして利用されていたようである。

WorldWide Telescope

American Astronomical Society による Web アプリケーション。 ちょうど Google Earth の天球版といった趣で、全天の天文写真と星座がインタラクティブに閲覧できる。

SQL Battleships

みんな大好きプラットフォーム濫用系アプリケーション。

PostgreSQL 上で動く Battleship (Hasbro が販売している古典的ボードゲーム。映画 Battleship の原案としても有名) である。実装言語は PL/pgSQL。親切なことに Dockerfile が提供されているのですぐにプレイできる。

コメント

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Perl 7 より先に Perl 5.34 が出るぞという話

Perl 5 の次期バージョンとして一部後方互換でない変更 (主に間接オブジェクト記法の削除とベストプラクティスのデフォルトでの有効化) を含んだメジャーバージョンアップである Perl 7 がアナウンスされたのは昨年の 6 月 のことだったが、その前に Perl 5 の次期周期リリースである Perl 5.34 が 5 月にリリース予定 である。 現在開発版は Perl 5.33.8 がリリースされておりユーザから見える変更は凍結、4 月下旬の 5.33.9 で全コードが凍結され 5 月下旬に 5.34.0 としてリリース予定とのこと。 そういうわけで事前に新機能の予習をしておく。 8進数数値リテラルの新構文 見た瞬間「マジかよ」と口に出た。これまで Perl はプレフィクス 0 がついた数値リテラルを8進数と見做してきたが、プレフィクスに 0o (zero, small o) も使えるようになる。 もちろんこれは2進数リテラルの 0b や 16進数リテラルの 0x との一貫性のためである。リテラルと同じ解釈で文字列を数値に変換する組み込み関数 oct も` 新構文を解するようになる。 昨今無数の言語に取り入れられているリテラル記法ではあるが、この記法の問題は o (small o) と 0 (zero) の区別が難しいことで、より悪いことに大文字も合法である: 0O755 Try / Catch 構文 Perl 5 のリリース以来 30 年ほど待たれた実験的「新機能」である。 Perl 5 における例外処理が特別な構文でなかったのは予約語を増やさない配慮だったはずだが、TryCatch とか Try::Tiny のようなモジュールが氾濫して当初の意図が無意味になったというのもあるかも知れない。 use feature qw/ try / ; no warnings qw/ experimental::try / ; try { failable_operation(); } catch ( $e ) { recover_from_error( $e ); } Raku (former Perl 6) だと CATCH (大文字なことに注意) ブロックが自分の宣言されたスコープ内で投げられた例外を捕らえる...

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プロジェクト毎に異なるバージョンの言語処理系やツールを管理するために、pyenv や nodenv など *env の利用はほとんど必須となっている。 これらはほとんど一貫したコマンド体系を提供しており、同じ要領で様々な環境構築ができる非常に便利なソフトウェアだが、それを使うことで別の問題が出てくる: *env 自身の管理である。 無数の *env をインストールし、シェルを設定し、場合によりプラグインを導入し、アップデートに追従するのは非常に面倒な作業だ。 幸いなことにこれをワンストップで解決してくれるソリューションとして anyenv がある。これは各種 *env のパッケージマネージャというべきもので、一度 anyenv をインストールすれば複数の *env を簡単にインストールして利用できる。さらに anyenv-update プラグインを導入すればアップデートまでコマンド一発で完了する。素晴らしい。 そういうわけでもう長いこと anyenv を使ってきた。それで十分だった。 ——のだが、 ここにもう一つ、対抗馬となるツールがある。 asdf である。anyenv に対する asdf の優位性は大きく2つある: 一貫性と多様性だ。 一貫性 “Manage multiple runtime versions with a single CLI tool” という触れ込み通り、asdf は様々な言語やツールの管理について一貫したインタフェースを提供している。対して anyenv は *env をインストールするのみで、各 *env はそれぞれ個別のインタフェースを持っている。 基本的なコマンド体系は元祖である rbenv から大きく外れないにしても、例えば jenv のように単体で処理系を導入する機能を持たないものもある。それらの差異はユーザが把握し対応する必要がある。 多様性 asdf はプラグインシステムを持っている。というより asdf 本体はインタフェースを規定するだけで、環境構築の実務はすべてプラグイン任せである。 そのプラグインの数は本稿を書いている時点でおよそ 300 を数える。これは言語処理系ばかりでなく jq などのユーティリティや MySQL のようなミドルウェアも含むが、いずれにしても膨大なツールが asdf を使えば...

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