スキップしてメイン コンテンツに移動

救急外来にかかったときの記録

子どもの頃にかかった記憶はあるが自分で行ったことはなかったのでメモしておく。

先日怪我をした。より具体的に云うとランニング中に転倒し顎を地面に叩きつけた。深夜の12時ごろの話である。

その時点ては両手の擦傷が痛いとか下顎の間接が痛いとか奥歯のセラミックが割れなくて幸いだったといった程度だが、マスクを外して見るとなにやら下部に血がついている。 顎にも擦傷があるのかとうんざりしながら歩いて帰り、血の滲んだマスクを捨てて傷口を洗おうとしたところで皮膚が割けて肉が見えているのに気付いた。

一瞬顔が青くなったが単身なので倒れるわけにはいかない。幸い血は固まっていてそれほど出血していないし、先程まで運動していたからかあまり痛みもない。

この時点で明白な選択肢は3つあった。即ち:

  1. 救急車を呼ぶ
  2. 自力で病院へ行き救急外来を受診する
  3. 応急処置して朝になったら近場の医院を受診する

である。まず 3 は精神的に無理だと悟った。血も完全には止まっていないし、痛みだしたら冷静に行動できなくなるだろう。 1 はいつでも可能だったが、意識明瞭で移動にも支障がない状態では憚られた。救急車が受け入れ先病院を探すのにも時間がかかると聞く。 結局とりあえず 1 をバックアップ案とし、2 の自分で連絡して病院へ向かうことにした。まずは病院探しである。このときだいたい 00:30 AM。

最初に連絡したのは最寄りの都立病院の ER だった。ここならタクシーで10分もかからない、のだが、なんと ER が現在休止しているとの回答だった。そんなことがあるのかと驚愕したがどうしようもない。 近場に形成外科の救急外来の開いている病院はないか尋ねたところ消防庁の相談センターの電話番号を案内された。

ここで4つの病院を紹介された。余談だが相談の対応は人間だが番号の案内は自動音声に切り替わるので録音の用意をした方が良い (一応2回くり返してくれる。) いずれも若干遠くタクシーで2、30分かかるが仕方がない。最初に連絡した最寄りの病院はその日形成外科の当直医師がいなかった。二件目でトリアージの質問をされ、受け入れ可能とのことだったので受診先が決定。このとき 00:45 AM。

診察時に脱ぎ易い服に着替え (このときまでランニングウェアだった)、健康保険証を持って病院へ向かう。ガーゼがないのでマスクの下には気休めにティッシュを詰めた。幸い駅の近くに住んでいるので迎車より拾う方が早かろうと駅に向かって歩く。4分ほど歩いたところでタクシーを拾うことができ、そのまま病院へ。01:20 AM には到着。 当然初診なので通り一辺倒の書類を書き、「呼ばれるまでしばらくお待ちください」。診察券の発行は早かったがそのあと実際に治療を受けられるまでは30分ほどひたすら待機。 他に待合席にいた患者は治療を終えたと思しき一組だけだったが、治療現場は混んでいたのかも知れない。まあ二本足で歩ける患者の優先順位は低かろう。

なんとなく気分が悪いような気がしてきた頃にようやく診てもらうことができ、傷口の洗浄・局部麻酔のち縫合で傷口を塞いでもらった。このとき 02:30 AM。つまり待ち時間と処置がだいたい同じくらい。 「ブラックジャックによろしく」にもあったが救急患者は保険診療でもそれに加えて特別料金を請求できるようで、手術自体や処方された痛み止めよりこちらの方が随分高かった。実際その病院は相場より高いらしいが Web ページにも書いてあるし受診前にも改めて確認されたのでボッタくっている訳ではない。 救急外来はその分野の専門医でないしそもそも研修医だったりするので応急処置しかしないものらしい。翌日近場の形成外科を受診するように紹介状を書いてもらう。これもまあまあ待つことになった。

タクシーで帰宅し、翌朝かかる診療所の場所を確認。Web ページに LINE への誘導があったのでオンライン予約できるかと思ったらどうやら手動対応だったので翌朝電話をかけることにして就寝。興奮と痛みであまり寝つきはよくなかった。このとき 03:40 AM。

翌朝一番に電話をかけて形成外科を受診し、傷口の再洗浄と真皮縫合を受けた。麻酔で感覚がない傷口をブラシで擦られるなどゾっとする体験をしたが、会計は昨晩の半額くらいだった。

学んだこと

  • 倒れたときに携帯電話を破損しなかったのは不幸中の幸いだった。唯一確実なリアルタイム通信手段は電話である。
  • 少ない救急外来に患者が集中するから軽傷ほど待たされる。夜中に怪我をするな。
  • 通常の治療よりかなり高くつく。夜中に怪我をするな。
  • どのみち翌日も専門医を受診することになる。夜中に怪我をするな。

コメント

このブログの人気の投稿

Perl 7 より先に Perl 5.34 が出るぞという話

Perl 5 の次期バージョンとして一部後方互換でない変更 (主に間接オブジェクト記法の削除とベストプラクティスのデフォルトでの有効化) を含んだメジャーバージョンアップである Perl 7 がアナウンスされたのは昨年の 6 月 のことだったが、その前に Perl 5 の次期周期リリースである Perl 5.34 が 5 月にリリース予定 である。 現在開発版は Perl 5.33.8 がリリースされておりユーザから見える変更は凍結、4 月下旬の 5.33.9 で全コードが凍結され 5 月下旬に 5.34.0 としてリリース予定とのこと。 そういうわけで事前に新機能の予習をしておく。 8進数数値リテラルの新構文 見た瞬間「マジかよ」と口に出た。これまで Perl はプレフィクス 0 がついた数値リテラルを8進数と見做してきたが、プレフィクスに 0o (zero, small o) も使えるようになる。 もちろんこれは2進数リテラルの 0b や 16進数リテラルの 0x との一貫性のためである。リテラルと同じ解釈で文字列を数値に変換する組み込み関数 oct も` 新構文を解するようになる。 昨今無数の言語に取り入れられているリテラル記法ではあるが、この記法の問題は o (small o) と 0 (zero) の区別が難しいことで、より悪いことに大文字も合法である: 0O755 Try / Catch 構文 Perl 5 のリリース以来 30 年ほど待たれた実験的「新機能」である。 Perl 5 における例外処理が特別な構文でなかったのは予約語を増やさない配慮だったはずだが、TryCatch とか Try::Tiny のようなモジュールが氾濫して当初の意図が無意味になったというのもあるかも知れない。 use feature qw/ try / ; no warnings qw/ experimental::try / ; try { failable_operation(); } catch ( $e ) { recover_from_error( $e ); } Raku (former Perl 6) だと CATCH (大文字なことに注意) ブロックが自分の宣言されたスコープ内で投げられた例外を捕らえる...

(multi-)term-mode に dirtrack させる zsh の設定

TL;DR .zshrc に以下を書けば良い: # Enable dirtrack on (multi-)term-mode. if [[ " $TERM " = eterm * ]]; then chpwd() { printf '\032/%s\n' " $PWD " } fi 追記 (May 14, 2025): oh-my-zsh を使っていれば emacs プラグインが勝手にやってくれる: plugins = ( emacs ) 仔細 term-mode は Emacs 本体に付属する端末エミュレータである。基本的には Emacs 内でシェルを起動するために使うもので、古い shell-mode よりも端末に近い動きをするので便利なのだが、一つ問題がある。シェル内でディレクトリを移動しても Emacs バッファの PWD がそのままでは追従しない点だ。 こういう追従を Emacs では Directory Tracking (dirtrack) と呼んだりするが、 shell-mode や eshell ではデフォルトで提供しているのに term-mode だけそうではない。 要するにシェル内で cd してもバッファの PWD は開いた時点のもの (基本的には直前にアクティヴだったバッファの PWD を継承する) のままなので、移動したつもりで C-x C-f などをするとパスが違ってアレっとなることになる。 実は term-mode にも dirtrack 機能自体は存在しているのだが、これは シェルがディレクトリ移動を伴うコマンドを実行したときに特定のエスケープシーケンスを含んだ行を印字することで Emacs 側に通知するという仕組み になっている。 Emacs と同じく GNU プロジェクトの成果物である bash は Emacs 内での動作を検出すると自動的にこのような挙動を取るが、zsh は Emacs の事情なんか知ったことではないので手動で設定する必要がある。 まずもって「ディレクトリ移動のコマンドをフックする」必要がある訳だが、zsh の場合これは簡単で cd / pushd / popd のようなディレクトリ...

macOS で GUI 版 Emacs を使う設定

macOS であっても端末エミュレータ上で CLI 版 Emacs を使っているプログラマは多いと思うが、端末側に修飾キーを取られたり東アジア文字の文字幅判定が狂ってウィンドウ描画が崩れたりなどしてあまり良いことがない。 それなら GUI 版の Emacs.app を使った方がマウスも使える上に treemacs などはアイコンも表示されてリッチな UI になる。 しかし何事も完璧とはいかないもので、CLI だと問題なかったものが GUI だと面倒になることがある。その最大の原因はシェルの子プロセスではないという点である。つまり macOS の GUI アプリケーションは launchd が起動しその環境変数やワーキングディレクトリを引き継ぐので、ファイルを開こうとしたらホームディレクトリ ( ~/ ) でなくルートディレクトリ ( / ) を見に行くし、ホームディレクトリなり /opt/local なりに好き勝手にインストールしたツールを run-* 関数やら shell やら flycheck やらで実行しようとしてもパスが通っていない。 ワーキングディレクトリに関しては簡単な解決策があり、 default-directory という変数をホームディレクトリに設定すれば良い。ただし起動時にスプラッシュスクリーンを表示する設定の場合、このバッファのワーキングディレクトリは command-line-default-directory で設定されており、デフォルト値が解決される前に適用されてしまうので併せて明示的に初期化する必要がある: (setq default-directory "~/") (setq command-line-default-directory "~/") 次にパスの問題だが、まさにこの問題を解決するために exec-path-from-shell というパッケージがある。これを使うとユーザのシェル設定を推定し、ログインシェルとして起動した場合の環境変数 PATH と MANPATH を取得して Emacs 上で同じ値を setenv する、という処理をやってくれる。MELPA にあるので package-install するだけで使えるようになる。 このパッケージは GUI ...

開発環境の構築に asdf が便利なので anyenv から移行した

プロジェクト毎に異なるバージョンの言語処理系やツールを管理するために、pyenv や nodenv など *env の利用はほとんど必須となっている。 これらはほとんど一貫したコマンド体系を提供しており、同じ要領で様々な環境構築ができる非常に便利なソフトウェアだが、それを使うことで別の問題が出てくる: *env 自身の管理である。 無数の *env をインストールし、シェルを設定し、場合によりプラグインを導入し、アップデートに追従するのは非常に面倒な作業だ。 幸いなことにこれをワンストップで解決してくれるソリューションとして anyenv がある。これは各種 *env のパッケージマネージャというべきもので、一度 anyenv をインストールすれば複数の *env を簡単にインストールして利用できる。さらに anyenv-update プラグインを導入すればアップデートまでコマンド一発で完了する。素晴らしい。 そういうわけでもう長いこと anyenv を使ってきた。それで十分だった。 ——のだが、 ここにもう一つ、対抗馬となるツールがある。 asdf である。anyenv に対する asdf の優位性は大きく2つある: 一貫性と多様性だ。 一貫性 “Manage multiple runtime versions with a single CLI tool” という触れ込み通り、asdf は様々な言語やツールの管理について一貫したインタフェースを提供している。対して anyenv は *env をインストールするのみで、各 *env はそれぞれ個別のインタフェースを持っている。 基本的なコマンド体系は元祖である rbenv から大きく外れないにしても、例えば jenv のように単体で処理系を導入する機能を持たないものもある。それらの差異はユーザが把握し対応する必要がある。 多様性 asdf はプラグインシステムを持っている。というより asdf 本体はインタフェースを規定するだけで、環境構築の実務はすべてプラグイン任せである。 そのプラグインの数は本稿を書いている時点でおよそ 300 を数える。これは言語処理系ばかりでなく jq などのユーティリティや MySQL のようなミドルウェアも含むが、いずれにしても膨大なツールが asdf を使えば...

去る6月に Perl 5.32.0 がリリースされたので差分を把握するために perldelta を読んだ件

要旨 Perl 5 メジャーバージョンアップの季節がやって来たのでまともな Perl プログラマの嗜みとして perldelta を読んだ。 今回は有り体に言えばルーティン的なリリースで、言語コアの拡張は他言語にも見られる構文が実験的に入ったくらいで大きな変化はない。新機能は RegExp の拡充が主である。 比較的重要と思われる変更点を抜粋する。 新機能 isa 演算子 実験的機能。Python とか Java における isinstance とか instanceof 。 これまでも UNIVERSAL::isa があったが、これはメソッドなのでレシーバにオブジェクトでもクラスでもない値 (i.e., 未定義値 / bless されていないリファレンス) を置くと実行時エラーが起きるのが問題だった: package Foo { use Moo; } package Bar { use Moo; extends ' Foo ' ; } package Baz { use Moo; } use feature qw/ say / ; sub do_something_with_foo_or_return_undef { my ( $foo ) = @_ ; # Returns safely if the argument isn't an expected instance, in mind. return unless $foo -> isa ( ' Foo ' ); ...; } # OK. do_something_with_foo(Bar->new); # |undef| is expected in mind, but actually error will be thrown. do_something_with_foo( undef ); これを避けるために今までは Scalar::Util::blessed を併用したりしていたわけだが、 isa 演算子は左辺が何であっても意味のある値を返すのでよりシンプルになる: # True +( bless +{} ...