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多分週刊チラシの裏 (Feb 28, 2021 - Mar 22, 2021)

JavaScript 開発者が如何にして TypeScript 嫌いから TypeScript ファンになったか

気軽な読み物。型宣言の冗長さとジェネリクスなどの複雑性を嫌って (選択肢にあれば) JavaScript の方を選んできた筆者が TypeScript しか選べない職場に移って数ヶ月後にはすっかりファンになっていたという話。

理由は月並で「『不可能な状態を不可能にする』Union Type と網羅性チェック」「コンパイル時型検査によるエラーの早期検出」「リッチな IDE 支援」の 3 本。理由がそれだけなら個人的には Flow か Elm を進めたいところではある。

NASA の最新火星ローバーが搭載するプロセッサは 1998 年の iMac と同じ

NASA が Mars 2020 ミッションのために送り出し、先月火星表面に着陸した最新かつ過去最大のローバーである Perseverance の話。 2021 年に活動を開始したこのハイテク・ガジェットのメインプロセッサは PowerPC 750 であるとのこと。1998 年発売の初代 iMac が搭載していた “G3” プロセッサといえば分かり易いだろう。

もちろん民生品そのものではなく、-55 - 125 ℃ の気温と 200,000 - 1,000,000 Rad の放射線に耐える特別仕様の BAE Systems RAD750 である。ちなみに「火星で自撮り」という快挙を成し遂げたのち現在も活動中の先代 Curiosity も同じものを搭載している。動作周波数 110 - 200 MHz、価格は $200,000 程度とのこと。

Internet Archive Infrastructure

過去の Web サイト、書籍、ビデオに音楽からクラシックソフトウェアまでインターネットに公開されたあらゆるデータを収集・保存する Internet Archive のインフラ紹介ビデオ。

クラウドは一切使っておらず、自前のベアメタルサーバ 750 台に接続されたストレージはシステム全体で 200PB とのこと。保存されるデータは現在のところ年 25 % 以上増大しており、四半期で 5 - 6 PB 規模だという。

Semantic Versioning はお前を救わない

「ある API に十分な数のユーザがいるなら、その観測可能な挙動のいずれも誰かが依存している —— それが保証されたものであろうとなかろうと」 (Hyrum の法則)

NPM 環境が取り入れたことで一般化した感のある SemVer だが、満足に運用するのはライブラリの開発者にとっても使用者にとっても辛いという主張。

結局「バージョン番号を比べるだけで互換性の有無が分かるように」開発を続けこと自体が難しく、ライブラリ使用者が破壊的変更を嫌って古いメジャーバージョンに依存性をロックすると脆弱性の放置や依存性の衝突など雑多な問題が発生することを論じている。

合衆国政府が自国の B-2 ステルス爆撃機をリバースエンジニアリングする技術者を募集中

全翼の特異な機影で知られる戦略爆撃機 B-2 Spirit は「ステルス爆撃機」「世界一高価な航空機」としてつとに有名だが、所有者である米国政府がどういうわけかその熱交換器 (Load Heat Exchangers) を分解修理する手順を確立するためのリバースエンジニアリング事業者を募集しているという話。

製造元の Northrop は被買収を経たものの現在も Northrop Grumman として健在なので、どうしてこのような仕事が必要になったのかは判然としない。

ともあれ 20 機しか現存しない同機の最終ブロックが製造ラインを出たのは 21 年前のことである。 冷戦終結以降米空軍機の平均機齢は伸び続けており、これら老朽兵器のオーバーホールや保守部品の再生産のためにリバースエンジニアリングや 3D プリント技術は盛んに用いられはじめている。 B-2 のように当時の先端技術を以って製造された航空機の、殊に飛行に不可欠な部品にとっては、これらの技術や手法の出現は将に時節を得ていたと言えるやも、とのこと。

老朽化した同機を置き換える予定の B-21 Raider は現在も開発中で、B-2 は少なくとも 2032 年までは運用される予定。ちなみに B-52 Storatofortress は 2050 年代まで 100 年間飛び続ける模様。

オーストリアの村が道路標識の盗難とジョークに辟易して改名

オーストリアの “Fucking” 村 (ドイツ語圏なので読みは「フッキン」に近い) が「旅行者も彼らの酷いジョークももう沢山」ということで 2020 年に Fugging 村に改名したとのこと。

ウィーンから 260 km 西にある人口 100 人ほどの小さな村だが、その出入口にあった “Fucking” と書かれた道路標識は主に英語圏の旅行者に写真スポットとして人気があった。この標識は度々盗難に遭っており、再設置の度に標識の位置を上げたりコンクリートに埋め込んだりといった対策を強いられていた。

ちなみにこの村にちなんだビールとして “Fucking Hell” なるペールラガーがあり (Hell は独語で「ペール」のこと) EU の知財庁にて商標登録されているが、醸造所は Fugging 村内にはない 。

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去る2025年7月2日に Perl 5.42 がリリースされた。ので例によって perldelta を一通り眺めた。 このバージョンは実験的機能である組込みのクラス構文の実装が進展した。 他にもパフォーマンスの改良、組み込み関数・演算子・C レベル API の追加、多数のバグ修正があるが劇的な変化ではなく、発見・修正された脆弱性もかなり限定的な問題なので刺さる機能がなければ急いで移行する必要はあまりないように思われる。 以下主だった新機能の抜粋。 source::encoding プラグマ ソースコードが特定の文字エンコーディングで記述されていることを宣言するプラグマ。サポートされているエンコーディングは ASCII と UTF-8 のみである。 use source::encoding 'ascii' が宣言された字句的スコープにおいて非 ASCII 文字を記述するとコンパイル時エラーが発生するようになる。 use source::encoding 'utf8' は単に use utf8 のシノニムである。 Perl 5 は 2000 年にリリースされたバージョン 5.6 から UTF-8 によるソースコード記述をサポートしているが、後方互換性のため既定では ASCII を前提としており、 utf8 プラグマを使わない限り文字列リテラルや RegExp リテラルはバイト列として解釈されるし、識別子にも英数字および '_' しか使うことができない。 識別子はともかく「リテラルは既定でバイト列である」という意味論は極めて誤用しやすい。Unicode 文字列のつもりで渡した値が意図せずバイト列であったために実行時警告・エラーを得た経験は非英語圏のプログラマなら一度ならずあるだろう。 このプラグマはそのような初歩的なバグをコンパイル時に検出することで、Perl プログラムの最も頻出するエラーの一つを実質的に解消しようとしている。 ちなみに use v5.42 すると自動で use source::encoding 'ascii' も有効になるので、今まさに警告を吐いているようなアプリケーションをアップグレードする際は注意が必要である。 any / all 演算子 実験的...

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