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多分週刊チラシの裏 (Mar 23, 2021 - Mar 27, 2021)

Intel プロセッサのマイクロコードを変更する非公開命令が発見される

今日のプロセッサは複雑な命令を単純な回路で実装したりバグの修正を容易にするため、1 個の命令でも実際にはプロセッサ内部に格納されたマイクロプログラムを実行するようになっていることが多い。 かつて浮動小数点演算器のバグで Pentium をリコールする羽目になった Intel も例外ではないのだが、Intel が電子署名したマイクロコードでなくとも適用できる非公開命令が発見されたという報告。

ただし無条件ではなく、命令自体はユーザモードでもデコードされるがプロセッサが特定の “Unlocked State” にないときは未定義命令として処理されるらしい。

MSKK の週休三日トライアルで生産性が四割向上

2019 年の記事。週休三日制を導入する事業所は中小を中心に増加しているが、Microsoft の日本法人であるマイクロソフト株式会社 (MSKK) が “Work Life Choice Challenge” と称して 2019 年夏に実施した金曜日を休日とする試験的措置において、前年同月比 40 % の生産性向上が見られたとのこと。

同施策は休日の追加に加えて会議時間短縮の奨励、またメッセージングアプリによる会議自体の代替なども含んでいる。

2015 年の電通における過労自殺事件に国際的な耳目が集まって以降、日本は「過労死」に象徴される長時間労働の是正に取り組んでおり、MSKK のこの措置は将に時節を得たものであったと言える。

r/WallStreetBets からゴリラ保護基金へ多額の寄付

「みんなで株価吊り上げて食い付いたヘッジファンド釣ろうぜ」という一種の祭で GameStop の株価が高騰したのは今年の 1 月だが、その震源地であった Reddit の WallStreetBets (WSB) コミュニティからマウンテンゴリラ保護のための基金である The Dian Fossey Gorilla Fund International に 350,000 USD の寄付があったとのこと。

ところで何故ゴリラかというと「猿の惑星」に倣って WSB コミュニティ内で同志を猿 (ape) と称していたからとか。異説に「猿みたいに株を買うのにキーボードを連打しているから」とも。 ともあれ基金の代表である Stoinski 博士はビデオで WSB への謝意を表明し、3 月 22 日現在 16,000 以上の upvote がつけられている。

WSB コミュニティがせしめた富で寄付するのはこれが初めてのケースではなく、参加した個人が地元の学校にクレヨンを寄贈したり地元の小児病院の職員にチキンテンダー (株用語の “tendies” とかけた洒落) を寄贈したりと謎のヌクモリティを発揮している。

スペインで安楽死と自殺幇助が合法化

スペインにおいてこれまで最大 10 年の懲役の対象であった、不治の病に苦しむ患者の安楽死と自殺幇助を合法化する法案が議会を通過した。2019 年の世論調査の結果を受けてのもの。

対象となるのはスペイン市民及び合法的居住者である。手続きの申請には 15 日の間隔をおいた 2 度の書面による明確な意思表示を必要とし、2 人の医師と評価体によって承認される。

下院での採決は賛成 202、反対 141、棄権 2 だった。前回の総選挙で議席を倍増させた極右政党 Vox と宗教右派からの反対が根強い。

欧州では他にベネルクス 3 国が既に安楽死を合法化しているほか、スイスでは自殺幇助は刑罰の対象にならないなど事実上合法化されている。ポルトガルでは合法化法案が議会を通過したが最高裁において違憲と判断された。

日本文化研究センターの呉座勇一助教が武蔵大学の北村准教授に中傷を繰り返していたことが発覚

日本文化研究センターの史学者であり中公新書のベストセラー「応仁の乱」の著者でもある呉座勇一助教が自身の Twitter フォロワーに向けて、武蔵大学の英文学者である北村紗衣准教授を中傷・侮辱するような投稿を当人には見えない形で繰り返していたことが明らかになった事件。現在も進行中の事案で記録のためリンク多め。

背景譚として、国立台湾大学の亀田俊和助理教授 (Assistant Professor; 日本でいう講師と准教授の中間) が故人である網野善彦の著作に触れた折の「レフティな方ですねw」「日本嫌いなのに、何で日本史研究したんだろ?w」という史学者とは思えない難癖に批判が寄せられ、それに対して「左翼の方々も日本を愛しておられたんですね。それは今まで存じませんでした。」という捨て台詞を継いで炎上した件がある。

これに文学者である北村准教授が冷笑系の言説だという感想を述べ、そこに亀田助理教授と交友のある呉座助教が当時非公開 (いわゆる鍵つき) だった自身のアカウントで「それこそ妄想じゃん」と応じたことがスクリーンショットでリークされたのが発端になった。このツイート自体は再反論の機会がないという問題があるにせよ批評の範疇と思われるが、実際はこれに留まらず北村准教授を侮蔑したり中傷する投稿を以前から継続的に行っていたことが相次いでリークされた1,2,3ことで炎上に発展した。なお両者に面識はない。

このとき呉座助教を擁護し北村准教授への非難・中傷に直接ないし間接的に加担した中には学術出版社である志学社の平林緑萌社長、史学者である山梨県立中央高等学校の平山優教諭、環日本海経済研究所の中島朋義研究員、神戸市外国語大学などに勤める鷲田睦朗非常勤講師など学術関係者も含まれており、史学コミュニティの党派性を示すこととなった。

呉座助教は当初これら擁護派と共に批判に対抗する姿勢を崩していなかったが、旗色が悪くなってきたことで結局は謝罪の意を表明した。しかし謝罪用にまず別アカウントを作り、それを取り止めて元のアカウント非公開のまま謝罪表明を行いフォロワーにスクリーンショットを転載してもらうという不審な行動に疑念が持たれた。結局謝罪表明の前後にも擁護者が北村准教授およびその支持者を愚弄するツイートを数多く Fav ないし RT していた4,5ことが発覚したため再度炎上した。 それらの Fav / RT を取り消したのちにアカウントを公開したことで、御田寺圭小山晃弘のようなインセル活動家に耽溺していたことが明らかとなった。過去のツイートからは北村准教授のみならずフェミニストをはじめとする多くの研究者・言論人・活動家に対する中傷・暴言が見つかっており、攻撃対象となった人々の知るところとなったものも多い。

呉座助教は来年度の NHK 大河ドラマ「鎌倉殿の13人」に (本人の専門は室町時代ながら) 時代考証の一人として参加する予定だったが、本人からの申し出を受けて事態を確認した NHK から降板を申し渡された。

勤務先の日本文化研究センターからは所長の井上章一名義でプレスリリースが出された。「個人の表現の自由を逸脱した良識を欠く行為」だったとし、「所長および副所長が当該教員に厳重な注意を行い、傷つけられた方々に対し誠実に謝罪するよう厳しく指導」したとのこと。

Richard Stallman がフリーソフトウェア財団理事に復帰

フリーソフトウェア運動と GNU プロジェクトの創始者である Richard Stallman (RMS) がフリーソフトウェア財団 (FSF) の理事会に復帰したことが突然発表された。

RMS が自ら設立した FSF の代表を辞任したのは 2019 年 9 月 16 日のことだったが、きっかけになったのは同年に発覚した、未成年者の売春を目的とする人身売買ネットワークを取り仕切っていた資産家 Jeffrey Epstein から MIT への寄付金スキャンダルである。 再逮捕された Epstein が 2019 年 8 月に疑惑の獄中自殺を果たした後も捜査は続き、その中で Epstein が MIT Media Lab へ多額の寄付をしていたこと、既に性犯罪者として MIT の寄付不適格者リストに入っていた Epstein からそれを受け取るために当時の所長であった伊藤譲一や理事の Peter Cohen らが匿名寄付として処理するように手を回していたことなどが明るみに出たことで伊藤が所長を辞任する事態となった。

これを受けて Epstein との関係の隠蔽に抗議するスレッドが MIT 内のメーリングリストで起こり、その中で被害者の一人である Virginia Roberts Giuffre が Epstein の「顧客」の一人として告発した故 Marvin Minsky 教授の名前が出たときの RMS の発言が問題とされた。 RMS は Epstein の罪については認めつつ、Minsky を擁護して「一番ありそうな筋書は、彼女 (Giuffre) 自身が完全に自発的であるように彼に見せたことだ」「住んでいる国とか、17 歳か 18 歳かみたいな瑣末に関わるやり方で『強姦』を定義するのは馬鹿げている」などと述べていたことが暴露された。 これがきっかけとなって RMS が自身の Web サイトで「自発的な」同意に基く未成年者との性交を擁護していることなどが知られるようになり炎上の様相となった。後に RMS は考えを改め、性交が未成年の被害者の精神に与える害を理解したと表明したが非難は止まず、結局「一連の誤解から来る MIT と自身への圧力により」MIT の職と FSF 代表から退くことを表明したのだった。

RMS の GNU / FSF 創始者、あるいは一ハッカーとしての功績は否定されるべきものではないが、これらの言動、あるいは創始者としての立場が FSF / GNU のガバナンスに与える影響を懸念し、また RMS の突然の復帰を認めた FSF 理事会に不審の念を以って、MozillaTorKDEEFF など複数の組織がこの復帰に否定的な見解を発表している。

この動きを受けて、著名なフリーソフトウェア開発者を含む複数人の連名で FSF の指導的立場から RMS を解くことを求める公開書簡 が発表された。(Disclosure: 私はこの公開書簡を支持するコントリビュータである。) またこれに対抗してFSF への RMS の復帰を擁護する公開書簡も発表され、それぞれ署名を募っている。 前者は 2600 人以上の個人と 40 以上のフリーソフトウェア関連団体が支持を表明している。後者は前者を上回るペースで個人署名を集めているが賛同する団体は未だない。リポジトリのデフォルトブランチ名に GitHub のデフォルトである “main” でなく “master” を敢えて使う、旭日旗風のタイトルロゴを採用し批判を受けて削除する前者の発起人の一人である Molly de Blanc 氏をターゲットにした「ミラーリング」と称する攻撃の提案など色々お察しの様相。

1993 年リリースの MS-DOS 用 Acrobat Reader へのダウンロードリンクを貼ったら DMCA テイクダウンされた件

F-Secure のセキュリティ研究者が Adobe Acrobat Reader を勝手配布しているダウンロードサイトへのリンクを含んだ 5 年前のツイートを RT したら DMCA テイクダウンでアカウントが一時凍結されたという話。なお問題となった Acrobat Reader は 28 年前にリリースされた MS-DOS 用のバージョン 1.0 である。 今さらこの古いバージョンを保護する動機が Adobe にあるとは考えがたく、おそらく自動化された通報システムによるものだろうとのこと。

Java Champions が選ぶ Java 16 の重要な新要素

Oracle が支援する Java 専門家のグループである Java Champions に Java Magazine が取材した記事。

Java 言語の改良点では明示的な SIMD 演算を利用可能にする JEP 338: Vector API (Incubator) / instanceof 検査成功時にダウンキャストした変数束縛を同時に行う JEP 394: Pattern matching for instanceof / Scala や Kotlin にもあるような不変複合データ型の構文糖衣を提供する JEP 395: Records が挙がっている。

またエコシステムの改良・変更にはインハウスの Mercurial リポジトリから GitHub への移行 JEP 357: Migrate from Mercurial to Git, JEP 369: Migrate to GitHub / ZGC ガベージコレクタの並列度を上げる JEP 376: ZGC: Concurrent Thread-Stack Processing / 台頭してきた ARM64 版 Windows に対応する JEP 388: Windows/AArch64 Port / コンテナのベースイメージなどクラウド上での利用に人気の軽量ディストロ Alpine Linux に対応する JEP 386: Alpine Linux Port が挙がった。

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C の時間操作関数は tm 構造体の BSD 拡張を無視するという話

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Perl のサブルーチン引数といえば実引数への参照を保持する特殊配列 @_ を手続き的に分解するのが長らくの伝統だった。これはシェルの特殊変数 $@ に由来する意味論で、おそらく JavaScript の arguments 変数にも影響を与えている。 すべての Perl サブルーチンはプロトタイプ宣言がない限りリスト演算子なので、この流儀は一種合理的でもあるのだが、実用的にそれで良いかというとまったくそうではないという問題があった; 結局大多数のサブルーチンは定数個の引数を取るので、それを参照する形式的パラメータが宣言できる方が都合が良いのである。 そういうわけで実験的に導入されたサブルーチンシグネチャ機能により形式的パラメータが宣言できるようになったのは Perl 5.20 からである。その後 Perl 5.28 において出現位置がサブルーチン属性の後に移動したことを除けば Perl 5.34 リリース前夜の今まで基本的に変わっておらず、未だに実験的機能のままである。 おまじない シグネチャは前方互換性を持たない (構文的にプロトタイプと衝突している) 実験的機能なのでデフォルトでは無効になっている。 そのため明示的にプラグマで利用を宣言しなければならない: use feature qw/signatures/; no warnings qw/experimental::signatures/; どの途みんな say 関数のために使うので feature プラグマは問題ないだろう。実験的機能を断りなしに使うと怒られるので、 no warnings で確信犯であることをアピールする必要がある。 これでプラグマのスコープにおいてサブルーチンシグネチャ (と :prototype 属性; 後述) が利用可能になり、 従来のプロトタイプ構文が無効になる。 使い方 対訳を載せておく。シグネチャの方は実行時に引数チェックを行うので厳密には等価でないことに注意: # Old School use feature qw/signatures/ 1 sub f { my ($x) = @_; ... } sub f($x) { ... } 2 sub f { my ($x, undef, $y) = @_

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Perl 5 の次期バージョンとして一部後方互換でない変更 (主に間接オブジェクト記法の削除とベストプラクティスのデフォルトでの有効化) を含んだメジャーバージョンアップである Perl 7 がアナウンスされたのは昨年の 6 月 のことだったが、その前に Perl 5 の次期周期リリースである Perl 5.34 が 5 月にリリース予定 である。 現在開発版は Perl 5.33.8 がリリースされておりユーザから見える変更は凍結、4 月下旬の 5.33.9 で全コードが凍結され 5 月下旬に 5.34.0 としてリリース予定とのこと。 そういうわけで事前に新機能の予習をしておく。 8進数数値リテラルの新構文 見た瞬間「マジかよ」と口に出た。これまで Perl はプレフィクス 0 がついた数値リテラルを8進数と見做してきたが、プレフィクスに 0o (zero, small o) も使えるようになる。 もちろんこれは2進数リテラルの 0b や 16進数リテラルの 0x との一貫性のためである。リテラルと同じ解釈で文字列を数値に変換する組み込み関数 oct も` 新構文を解するようになる。 昨今無数の言語に取り入れられているリテラル記法ではあるが、この記法の問題は o (small o) と 0 (zero) の区別が難しいことで、より悪いことに大文字も合法である: 0O755 Try / Catch 構文 Perl 5 のリリース以来 30 年ほど待たれた実験的「新機能」である。 Perl 5 における例外処理が特別な構文でなかったのは予約語を増やさない配慮だったはずだが、TryCatch とか Try::Tiny のようなモジュールが氾濫して当初の意図が無意味になったというのもあるかも知れない。 use feature qw/ try / ; no warnings qw/ experimental::try / ; try { failable_operation(); } catch ( $e ) { recover_from_error( $e ); } Raku (former Perl 6) だと CATCH (大文字なことに注意) ブロックが自分の宣言されたスコープ内で投げられた例外を捕らえる