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多分週刊チラシの裏 (Sep 14-20, 2020)

自分にとってのニュースは自らまとめるしかないと思い至ったので興味深かったものをまとめる。

Moment.js 開発終了

JavaScript における日時処理の定番であった Moment.js の開発がメンテナンスモードへの移行を宣言した。

歴史のあるライブラリであり、オブジェクトが可変で flux アーキテクチャと相性が悪いとか、自前の国際化リソースが全部バンドルされているので昨今の Dead Code Elimination (a.k.a. Tree-Shaking) を伴うバンドラでもサイズが縮まらないといった問題が指摘されていた。 互換性を保ったまま問題を解決できる見込みがなく、非互換な新バージョンをリリースして移行の混乱を生むよりは設計段階で問題を解決している別ライブラリに移行せよとのこと。

参考に個人的な見解を述べると、代替候補として挙げられている dayjs はお勧めしない。タイムゾーンのサポートなど多くの場合に必要な機能がプラグインで実現されており、それらプラグインは dayjs オブジェクトにメソッドを実行時に追加したり差し替えたりするので TypeScript や flow の型定義と一致しなくなるためである。結局利用するプラグインを適用したバージョンの型定義ファイルを自分で作る羽目になるのだ。

dayjs に限らず TypeScript や flow はプラグイン機構を持った JavaScript ライブラリと相性が悪いので、オールインワンなモジュールを採用する方が良い。代替候補の中では最初に挙がっている Luxon が無難である。

20年来の銀英伝ファンからみた今回の揉め事

「銀河英雄伝説」という古いスペースオペラ小説を原作とするアニメについて以下のツイートが炎上した件:

どう読んでもただの感想だが、話題がジェンダーかつ発言者の津田正太郎教授の所属が「社会学部」ということで表現の自由戦士の標的にされたもの。

「社会学者1が『作品を書き換えろ』2と製作者にクレームしている3」という曲解が拡散され誹謗中傷に疲弊した発言者は謝罪の表明に追い込まれた。扇動者の中には「ヘルシング」の平野耕太も混じっているなど病巣の根は深い。

Free Speech Warrior

上の話題に関連して、そういえば表現の自由戦士って英語圏だとどう呼ばれているのだろうと思ったらそのまま「表現の自由戦士 (Free Speech Warrior)」であるらしい。

Bill Gates Sr. が逝去

Bill & Melinda Gates 財団の代表であり Microsoft 創業者の一人でもある Bill Gates の父が亡くなった。94 歳だった。

Microsoft の二年にわたる水中データセンター実験が終了し引き揚げ

「データセンターごと海に沈めればタダで冷却できるんじゃね?」という一見馬鹿の発想を Microsoft が大真面目に実証実験したら案外上手くいったという話。

Project Natick と呼ばれるその実験で、大型シリンダーにサーバーを詰め込んでスコットランド北部はオークニー (Orkney) の海底に沈めたのが 2018 年の 5 月。 二年と数ヶ月の運用中に故障したサーバは 855 台中 8 台で、これは通常の 1/8 の割合であったとのこと。これにはシリンダー内に充填された窒素によって部品の劣化が抑えられたことと、デリケートな機械の周りを動き回るヒトの不在が寄与していると推測されている。 オークニーの電力はすべて再生可能エネルギー (風力と太陽光) で賄われているが、実験期間中エネルギー供給に問題は一切発生しなかったという。

自然災害やテロへの対策としても水中データセンターは魅力的な構想であり、さらに環境負荷や信頼性の面でも有望な結果が得られたということで、期待がもてる話である。

Nintendo 3DS が生産終了

Nintendo がおおよそ十年にわたる Nintendo 3DS シリーズの生産を終了した。

全バリエーションを総合した通算販売実績は 2020 年 6 月まででおよそ 7,600 万台とのこと。同世代の据置機は Wii U で、こちらは 1,400 万台にも届かなかったので、当時の Nintendo を文字通り支えたゲーム機である。

発売当初は過去のコンソールより高価であったことや 3D 酔いが特に小児に多発したことで売上が伸びず、ハードウェアの改良と大幅な値下げ、老眼にも助かる XL (日本では “LL”) モデルや目玉機能の裸眼立体視を省いた 2DS の投入などなりふり構わぬテコ入れが行われた。 特筆すべき点としては Nintendo コンソールの中で最初にダウンロード版ゲームのオンラインストアが提供されたことが挙げられる。

直接的な後継ではないものの、2017 年に発売された携帯・据置両用の Nintendo Switch は既に 6,000 万台以上の売上を記録している。

ランサムウェアが病院の急患受付を停止させ患者が死亡

史上初かも知れないサイバー攻撃による直接的な死者が出たやも、という話。

デュッセルドルフ大学病院がランサムウェア攻撃を受けたために急患に対応できず、30 km 以上離れた別の医療施設に搬送される途中で患者の女性が死亡した。 本来この攻撃は病院を標的にしたものではなく身代金の要求は近隣の大学宛だったとのこと。誤りを知らされた攻撃者は攻撃を停止したが遅かった。

捜査は依然途上だが、犠牲者の死の原因が遠隔地への搬送であったと結論づけられればこのサイバー攻撃は殺人事件として扱われるとのこと。

Mozilla Thunderbird が PGP 暗号化とデジタル署名を実装

Mozilla のメールアプリケーションである Thunderbird のバージョン 78 に OpenPGP ベースの暗号化とデジタル署名機能が含まれる。 最初にこの機能が要望されたのは 21 年前のことである (当時は Firefox / Thunderbird の前身である Mozilla Application Suite)。当時は合衆国の暗号輸出規制への懸念や PGP 自体の妥当性の論争があったために実装が見送られたとのこと。

Twitter の肖像トリミング機能に人種バイアスがある

Twitter の画像付ツイートは画像が大きい場合トリミングされたものを表示するが、単に画像の中央ではなく重要そうな部分を切り抜くようになっている。 おそらく機械学習で生成されたであろうこのトリミング範囲決定モデルに人種バイアスがありそうだという報告。

白人 (Mitch McConnell) と黒人 (Barack Obama) を載せた画像に対して両者の位置を入れ替えても常に白人である前者がトリミングされている。

Scientific American 誌が 175 年の伝統を破り大統領選の Joe Biden 支持を表明

二世紀近い歴史を持つ合衆国の一般向け科学雑誌である Scientific American が民主党の大統領候補である Joe Biden への支持を表明した。

伝統的に政治的な意見表明を行って来なかった同誌も COVID-19 パンデミックへの対応をはじめ科学的知見を無視した Trump 陣営の失政は看過できなかったとのこと。

フランスでは GPL 違反は著作権侵害ではないらしい

GPL が著作権 (Copyright) に基いた著作者の (合法的な) コピー所有者に対する利用許諾であるという見方は万国に普遍的なものではない、という話。

フランスのソフトウェア開発会社 Entr’ouvert が通信事業者 Orange (旧称 France Télécom) の GPL 違反をソフトウェアの不正コピーであるとして知財法廷に訴えたが昨年棄却され、裁判費用の負担を命じられた。 フランスは大陸法の国である。英米法の著作権に相当するものは「著作者の権利 (Author’s Rights)」 であり、許諾は契約の一種という扱いになる。

フランスでは訴訟の種別毎に対応する法廷が違い、著作権や知的財産に関わる訴訟には Tribunal de grande、契約に関する訴訟は Tribunal de Commerce が対応するらしい。 原告が訴え出たのは前者だったが、作成に数年を要した法廷報告によって「GPL に基く原告と被告両者の関係は契約であるから本件は知財法廷の管轄ではない」という判断が下された。


  1. 社会学者ではない。↩︎

  2. 言っていない。「変更せざるをえない気がする」という感想を恣意的に曲解したものか。↩︎

  3. していないし、する気もないとのこと。↩︎

コメント

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Perl 5 の次期バージョンとして一部後方互換でない変更 (主に間接オブジェクト記法の削除とベストプラクティスのデフォルトでの有効化) を含んだメジャーバージョンアップである Perl 7 がアナウンスされたのは昨年の 6 月 のことだったが、その前に Perl 5 の次期周期リリースである Perl 5.34 が 5 月にリリース予定 である。 現在開発版は Perl 5.33.8 がリリースされておりユーザから見える変更は凍結、4 月下旬の 5.33.9 で全コードが凍結され 5 月下旬に 5.34.0 としてリリース予定とのこと。 そういうわけで事前に新機能の予習をしておく。 8進数数値リテラルの新構文 見た瞬間「マジかよ」と口に出た。これまで Perl はプレフィクス 0 がついた数値リテラルを8進数と見做してきたが、プレフィクスに 0o (zero, small o) も使えるようになる。 もちろんこれは2進数リテラルの 0b や 16進数リテラルの 0x との一貫性のためである。リテラルと同じ解釈で文字列を数値に変換する組み込み関数 oct も` 新構文を解するようになる。 昨今無数の言語に取り入れられているリテラル記法ではあるが、この記法の問題は o (small o) と 0 (zero) の区別が難しいことで、より悪いことに大文字も合法である: 0O755 Try / Catch 構文 Perl 5 のリリース以来 30 年ほど待たれた実験的「新機能」である。 Perl 5 における例外処理が特別な構文でなかったのは予約語を増やさない配慮だったはずだが、TryCatch とか Try::Tiny のようなモジュールが氾濫して当初の意図が無意味になったというのもあるかも知れない。 use feature qw/ try / ; no warnings qw/ experimental::try / ; try { failable_operation(); } catch ( $e ) { recover_from_error( $e ); } Raku (former Perl 6) だと CATCH (大文字なことに注意) ブロックが自分の宣言されたスコープ内で投げられた例外を捕らえる

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