スキップしてメイン コンテンツに移動

Project Euler - Problem 29

こんばんはSekia the Liarです。更新頻度についての釈明はさておきえーとP.E. 29でしたね。はい、すいません。

問題

  • 原文

    Consider all integer combinations of a^(b) for 2 ≤ a ≤ 5 and 2 ≤ b ≤ 5: (引用者による省略) How many distinct terms are in the sequence generated by ab for 2 ≤ a ≤ 100 and 2 ≤ b ≤ 100?

  • 日本語訳

    2 ≤ a ≤ 5 と 2 ≤ b ≤ 5について, abを全て考えてみよう: (引用者による省略) 2 ≤ a ≤ 100, 2 ≤ b ≤ 100 で同じことをしたときいくつの異なる項が存在するか?

解答

値の重複を取り除くにはハッシュを使うのが定石です。

use strict;
use warnings;
use feature qw/say/;
use Math::BigInt;

my %pows;
for my $n (2 .. 100) {
  for my $i (2 .. 100) {
    $pows{ Math::BigInt->new($n) ** $i } = 1;
  }
}
say scalar keys %pows;

しかしPerlのメソッド解決オーバヘッドは結構でかいので、10,000個のMath::BigIntインスタンス生成は割と時間を食います。毎回Math::BigIntというのも芸がないし、少し頭を使って解いてみることにしました。

ab = (an)b/nであることに着目しましょう。これは中学だか高校だかで習った通りです。ただし問題の範囲は整数なので、指数は2 ≤ b/n ≤ 100なる整数でなければなりません。つまりnはbの約数(ただしb自身を除く)です。

この等号で結ばれたべき乗は同じ(つまり重複した)値を持ちます。

例えば212 = 4(=22)6 = 8(=23)4 = 16(=24)3 = 64(=26)2 = 4,096であり、他に4,096となるようなべき乗は整数の範囲ではなさそうです(証明してないので間違ってたら教えてください)。

これをふまえると、等式が成り立つa、bの組のうちaが最小のもの(ここでa0、b0とおきましょう)が分かれば、残りのものはすべてa = a0n、b = b0/nの形をしているはずです。したがって同じ値を持つa、bの組はすべてa0、b0から求められます。

よってa0、b0のみを数えて、残りは重複として印をつけてスキップするようにすれば、重複のないべき乗の個数を数えることができます。

ところで2 ≤ an ≤ 100、2 ≤ b/n ≤ 100という拘束条件にちょっとした注意が必要です。というのも、n = 1のときにこの条件を満足せず、nがある程度大きくなれば満足するa、bが存在するからです。 このような数を取りこぼさないためにはb/n ≤ 100 × floor(logn100)(floorは床関数)までを探索し、b/n ≤ 100である間はnに1加えて何もせずスキップする、というような処理が必要になります。

#!/usr/bin/env perl

use strict;
use warnings;
use feature qw/say/;
use POSIX qw/floor/;

{
  my %memos;
  #returns divisors of $n (except $n itself) in numeric order
  sub divisors($) {
    my $n = shift;
    return @{ $memos{$n} } if exists $memos{$n};

    my @early = grep { $n % $_ == 0 } 2 .. floor sqrt $n;
    my @later = reverse map { $n / $_ } @early;
    shift @later if @later != 0 and $later[0] ** 2 == $n;

    return @{ $memos{$n} = [1, @early, @later] };
  }
}

sub logn($$) { my ($b, $n) = @_; (log $n) / (log $b) }

my %passed;
my $num_distincts = 0;
for my $n (2 .. 100) {
  my $max_i = 100 * floor logn($n, 100);
  for my $i (2 .. $max_i) {
    my $is_dist = 0;
    for my $d (divisors $i) {
      my ($m, $j) = ($n ** $d, $i / $d);
      next if $passed{$m, $j};
      next if $j > 100;
      last if $m > 100;

      $passed{$m, $j} = $is_dist = 1;
    }
    $num_distincts++ if $is_dist;
  }
}
say $num_distincts;

蛇足な補足

実装にちょっと珍しい多次元配列のエミュレート機能を使っています。$passed{$m, $j}という部分です。 ぱっと見ハッシュ・スライスのようですが、シジルが$なことから分かるようにスカラ値を返します。

これは次のように解釈されます:

$passed{ join($;, $m, $j) }

Perl 5のハッシュが文字列しかキーにできないという制約からこのような形になっているのでしょう。$;use Englishすると$SUBSEP)は特殊変数で、デフォルトでは"¥034"が入っています。これはUS-ASCIIではFS(File Separator)という制御文字なので、キーの値と混同されることはまずありません。

Pythonなどのタプルをキーとする方法に比べると美しくありませんが、使い勝手に差はないので案外と重宝します。疎な多次元配列を作るときなどは配列リファレンスよりこちらの方がいいでしょう。

コメント

このブログの人気の投稿

BuckleScript が ReScript に改称し独自言語を導入した

Via: BuckleScript Good and Bad News - Psellos OCaml / ReasonML 文法と標準ライブラリを採用した JavaScript トランスパイラである BuckleScript が ReScript に改称した。 公式サイトによると改称の理由は、 Unifying the tools in one coherent platform and core team allows us to build features that wouldn’t be possible in the original BuckleScript + Reason setup. (単一のプラットフォームとコアチームにツールを統合することで従来の BuckleScript + Reason 体制では不可能であった機能開発が可能になる) とのこと。要は Facebook が主導する外部プロジェクトである ReasonML に依存せずに開発を進めていくためにフォークするという話で、Chromium のレンダリングエンジンが Apple の WebKit から Google 主導の Blink に切り替わったのと似た動機である (プログラミング言語の分野でも Object Pascal が Pascal を逸脱して Delphi Language になったとか PLT Scheme (の第一言語) が RnRS とは別路線に舵を切って Racket になったとか、割とよくある話である。) 公式ブログの Q&A によると OCaml / ReasonML 文法のサポートは継続され、既存の BuckleScript プロジェクトは問題なくビルドできるとのこと。ただし現時点で公式ドキュメントは ReScript 文法のみに言及しているなど、サポート水準のティアを分けて ReScript 文法を優遇することで移行を推進していく方針である。 上流である OCaml の更新は取り込み、AST の互換性も維持される。将来 ReScript から言語機能が削除されることは有り得るが、OCaml / ReasonML からは今日の BuckleScript が提供する機能すべてにアクセスできる。 現時点における ReScript の

C の時間操作関数は tm 構造体の BSD 拡張を無視するという話

久しぶりに C++ (as better C) で真面目なプログラムを書いていて引っかかったので備忘録。 「拡張なんだから標準関数の挙動に影響するわけねえだろ」という常識人は読む必要はない。 要旨 time_t の表現は環境依存 サポートしている時刻は UTC とプロセスグローバルなシステム時刻 (local time) のみで、任意のタイムゾーン間の時刻変換を行う標準的な方法はない BSD / GNU libc は tm 構造体にタイムゾーン情報を含むが、tm -> time_t の変換 ( timegm / mktime ) においてその情報は無視される 事前知識 C 標準ライブラリにおいて時刻の操作に関係するものは time.h (C++ では ctime) ヘッダに定義されている。ここで時刻を表現するデータ型は2つある: time_t と tm である。time_t が第一義的な型であり、それを人間が扱い易いように分解した副次的な構造体が tm という関係になっている。なので標準ライブラリには現在時刻を time_t として取得する関数 ( time_t time(time_t *) ) が先ずあり、そこから time_t と tm を相互に変換する関数が定義されている。 ここで time_t の定義は処理系依存である。C / C++ 標準はそれが算術型であることを求めているのみで (C11 からは実数型に厳格化された)、その実体は任意である。POSIX においては UNIX epoch (1970-01-01T00:00:00Z) からのうるう秒を除いた経過秒数であることが保証されており Linux や BSD の子孫も同様だが、この事実に依存するのは移植性のある方法ではない。 一方で tm は構造体であり、最低限必要なデータメンバが規定されている: int tm_year : 1900 年からの年数 int tm_mon : 月 (0-based; 即ち [0, 11]) int tm_mday : 月初からの日数 (1-based) int tm_hour : 時 (Military clock; 即ち [0, 23]) int tm_min : 分 int tm_sec : 秒 (うるう秒を含み得るので [0

js_of_ocaml の使い方

js_of_ocaml (jsoo) は Ocsigen が提供しているコンパイラである。その名の通り OCaml バイトコードから JavaScript コードを生成する。 これを使うことで OCaml で書いたプログラムを Web ブラウザや node.js で実行することができる。 インストール 単に OPAM を使えば良い: $ opam install js_of_ocaml js_of_ocaml-ocamlbuild js_of_ocaml-ppx バージョン 3.0 から OPAM パッケージが分割されたので、必要なライブラリやプリプロセッサは個別にインストールする必要がある。 とりあえず使うだけなら js_of_ocaml と js_of_ocaml-ppx の二つで十分。後述するように OCamlBuild でアプリケーションをビルドするなら js_of_ocaml-ocamlbuild も入れると良い。 これで js_of_ocaml コマンドがインストールされ、OCamlFind に js_of_ocaml 及びサブパッケージが登録される。 コンパイルの仕方 以下ソースファイル名は app.ml とし、ワーキングディレクトリにあるものとする。 手動でやる場合 一番安直な方法は、直接 js_of_ocaml コマンドを実行することである: $ # バイトコードにコンパイルする。js_of_ocaml.ppx は JavaScript オブジェクトの作成や操作の構文糖衣を使う場合に必要 $ ocamlfind ocamlc -package js_of_ocaml,js_of_ocaml.ppx -linkpkg -o app.byte app.ml $ # 得られたバイトコードを JavaScript にコンパイルする $ js_of_ocaml -o app.js app.byte OCamlBuild を使う場合 OCamlBuild を使う場合、.js 用のビルドルールを定義したディスパッチャが付属しているので myocamlbuild.ml でこれを使う: let () = Ocamlbuild_plugin . dispatch Ocamlbuild_js_of_ocaml . dispatcher $ # app.ml ->

macOS で GUI 版 Emacs を使う設定

macOS であっても端末エミュレータ上で CLI 版 Emacs を使っているプログラマは多いと思うが、端末側に修飾キーを取られたり東アジア文字の文字幅判定が狂ってウィンドウ描画が崩れたりなどしてあまり良いことがない。 それなら GUI 版の Emacs.app を使った方がマウスも使える上に treemacs などはアイコンも表示されてリッチな UI になる。 しかし何事も完璧とはいかないもので、CLI だと問題なかったものが GUI だと面倒になることがある。その最大の原因はシェルの子プロセスではないという点である。つまり macOS の GUI アプリケーションは launchd が起動しその環境変数やワーキングディレクトリを引き継ぐので、ファイルを開こうとしたらホームディレクトリ ( ~/ ) でなくルートディレクトリ ( / ) を見に行くし、ホームディレクトリなり /opt/local なりに好き勝手にインストールしたツールを run-* 関数やら shell やら flycheck やらで実行しようとしてもパスが通っていない。 ワーキングディレクトリに関しては簡単な解決策があり、 default-directory という変数をホームディレクトリに設定すれば良い。ただし起動時にスプラッシュスクリーンを表示する設定の場合、このバッファのワーキングディレクトリは command-line-default-directory で設定されており、デフォルト値が解決される前に適用されてしまうので併せて明示的に初期化する必要がある: (setq default-directory "~/") (setq command-line-default-directory "~/") 次にパスの問題だが、まさにこの問題を解決するために exec-path-from-shell というパッケージがある。これを使うとユーザのシェル設定を推定し、ログインシェルとして起動した場合の環境変数 PATH と MANPATH を取得して Emacs 上で同じ値を setenv する、という処理をやってくれる。MELPA にあるので package-install するだけで使えるようになる。 このパッケージは GUI

Perl のサブルーチンシグネチャ早見表

Perl のサブルーチン引数といえば実引数への参照を保持する特殊配列 @_ を手続き的に分解するのが長らくの伝統だった。これはシェルの特殊変数 $@ に由来する意味論で、おそらく JavaScript の arguments 変数にも影響を与えている。 すべての Perl サブルーチンはプロトタイプ宣言がない限りリスト演算子なので、この流儀は一種合理的でもあるのだが、実用的にそれで良いかというとまったくそうではないという問題があった; 結局大多数のサブルーチンは定数個の引数を取るので、それを参照する形式的パラメータが宣言できる方が都合が良いのである。 そういうわけで実験的に導入されたサブルーチンシグネチャ機能により形式的パラメータが宣言できるようになったのは Perl 5.20 からである。その後 Perl 5.28 において出現位置がサブルーチン属性の後に移動したことを除けば Perl 5.34 リリース前夜の今まで基本的に変わっておらず、未だに実験的機能のままである。 おまじない シグネチャは前方互換性を持たない (構文的にプロトタイプと衝突している) 実験的機能なのでデフォルトでは無効になっている。 そのため明示的にプラグマで利用を宣言しなければならない: use feature qw/signatures/; no warnings qw/experimental::signatures/; どの途みんな say 関数のために使うので feature プラグマは問題ないだろう。実験的機能を断りなしに使うと怒られるので、 no warnings で確信犯であることをアピールする必要がある。 これでプラグマのスコープにおいてサブルーチンシグネチャ (と :prototype 属性; 後述) が利用可能になり、 従来のプロトタイプ構文が無効になる。 使い方 対訳を載せておく。シグネチャの方は実行時に引数チェックを行うので厳密には等価でないことに注意: # Old School use feature qw/signatures/ 1 sub f { my ($x) = @_; ... } sub f($x) { ... } 2 sub f { my ($x, undef, $y) = @_